君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
私の反応に澪音がくすくすと笑っている。


「ピアノが絡むと、やっぱり柚葉はカノンに似てる」


「もう……。いいですけどね、カノン可愛いし。体が大きい所と力が強い所は似てる自覚あるし」


ワンコに似てると言われようが、目の前に置かれた携帯プレーヤーは私にとって魅惑的過ぎる。早速ヘッドフォンをして再生した。

始まりの曲は、最初に聞かせてくれたワルツだった。


「このワルツ好きなんです……! ずっと聞いちゃいそう」


幸せを噛み締めながら澪音のピアノを聞いていると、不意に澪音が私の膝に頭を乗せて寝転んだ。


「それ全部で一時間以上はあるから、後で聞いてよ。

柚葉が構ってくれないと俺が暇だ」


完全に心を許しているその仕草と、甘えるような言葉にびっくりして体が硬直する。澪音はたまにこういうことをするから、とても困る。


「わ、わかりましたっ

でもこの一曲だけは終わりまで聞かせてください……」


携帯プレーヤーに表示された曲目リストには、たくさんの知らない曲が表示されていた。どれも今すぐ聞きたいけれど、少し拗ねた澪音の顔には勝てないので我慢する。


「あの……ノクターンとか、バラードとか、プレリュードとか……これが曲名なんですか?」


「曲名と言えるほどでもないけど、タイトルがないと不便だろ。その名前は曲の形式を示す一般的な名称なんだ」
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