君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
ヘラヘラしてよく喋る。俺の過去を知っていたのは意外だか、コンクールの話題など今更どうでもいい。


「樫月さんがピアノを止めてショックだったんですよ。だからまさか、飲食店であなたの演奏を聞けるとは思ってなかった。

意外と腕は錆び付いてないんですね。ピアニスト、止めなきゃ良かったのに」


「お前と音楽の話をする気はない。要件が無いなら帰れ」


「短気だなあ。話には順序ってものがあるでしょう。

……そんな顔して、もしかして、本当はピアノ止めたくなかったとか?」


土足で心に入り込まれるようで不快だった。杉崎は柔和な表情を浮かべながら、決して目は笑っていない。この男は厚かましさを装って俺を挑発しているのだ。


「次の予定が詰まっている。結論だけ言え」


「……白馬の王子さま気取りなのかもしれないけど、あんたの存在は一般人には迷惑だ。

彼女にあんたは相応しくない。女なら皆財力に喜ぶとでも思ってるの?あの家も彼女にとっては足枷にしかなんねーよ。

生まれつき勝ち組のあんたには、そんなこともわからないか?」


杉崎は上っ面の笑顔を取り去って、ぎらついた目を俺に向けた。それが本性なら、始めからそうしていろと言いたい。



俺は柚葉に相応しくない。



そんなこと、言われるまでもなく知っている。
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