生きていくこと
─3年生 領域別実習─
ことはや穂乃里の通う看護学校では2年生の終わり頃から3年生の10月末まで領域別実習という、成人、老年、母性、精神、小児、在宅という領域ごとにわかれて実習を行う。




ことはは実習に苦手意識があった。決して実習の評価が低いとか、態度が悪いわけではないけれど。




「はぁ〜実習かぁ。○○病棟行ったときなんて電子カルテのカートで足轢かれて、バイタルの報告も忙しいのわかってるから指導者さんが受け持ち患者さんの記録やってるときにタイミング見て報告してるのに返事もせずそっぽ向いて“で?へぇ”って言われたなぁ。夜も記録で寝れないし。」




「ことはがそんなふうに弱音吐くとこはじめてみた。まぁ、でもたしかにことはってさ、指導者さんの運悪いよね。基礎のときに転倒リスクある患者さんのトイレ介助放置されたこともあったよねぇ笑。中には本当に素敵な人もいるよ。夜寝れないのはつらいけどさ、それは私も仲間だし、先生に記録でなんか言われたことだってないじゃん。それってさ、まともに記録書いてるってことだしそれなりの評価ももらってるじゃない、私たち。」




「やっぱりそれって運もあるよね……。運で言い訳せずがんばろう笑。指導者さんの心中を忖度しよう!なーんてね。私たち寝れないコンビだもんね。がんばろー」




「そうだよ、忖度忖度。もうこの際、QOLの維持は諦めてSOL保てるようにがんばろうね、ことは。
さーてこの話はもう終わり!持ち物はそろえたし、要項確認して事前学習振り返って、寝る!」




「うん!」




こんなかんじで私たちの長い実習は始まった。
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