ロッカールーム
新校舎ができてからは誰にも必要とされず、ずっとここで立っていたのだということがわかった。


「ここだね」


あたしがそう言うと、サクが小さく頷いた。


もう手は離していたけれど、サクはあたしにピッタリと寄り添っている。


ヒヤリと冷たい旧校舎の中で、サクの体温だけが暖かかった。


「行くよ」


あたしはそう言い、木製のロッカー手を伸ばしたのだった。
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