恋に落ちたらキスをして
「本当に一緒に住むつもりなの?」

 持ちきれないほどに買い物をして、大多数を家に送らせた。
 送り先に尚之のマンションの住所と名前を書いたのを見た上での質問だ。

「えぇ。いけませんか?
 今、彼女をちょうど切らしてて。」

「お醤油みたいに言わないでよ。」

「ハハッ。いいですね。醤油彼女。」

 不満そうな顔をされても別に悪びれる必要はなかった。
 切らしたことのない彼女もかぶったことはない。

 浮気なんてクソ面倒なことするわけがなかった。
 綺麗に切れてから、その後に別の人と楽しめばいいだけ。

「だいたいなんで園田くんがブラックカード持ってるわけ?」

「知りませんでした?
 俺の家、割と金持ちですよ?」

 資産家の親は息子にブラックカードを持たせるほどに緩かった。
 おかげで何不自由ない生活をさせてもらえている。

「家がお金持ちだからって威張らないで。
 自分が頑張ってないお金なんて。」

「あー。そんなこと入社当時にも誰かに言われたなぁ。
 だから俺、頑張って社内でトップクラスの営業成績なんだけどなぁ。」

 入社当時に笹島先輩に同じようなことを言われた。
 当時からあまり俺のことをよく思っていないようだった。

 そんな俺に助けられるんだから面白いよね。

「はいはい。何もかも持ってて嫌味よね。」

「お金も仕事も見た目もね。」

「性格さえまともだったらね。
 重要なところが欠けていたわよね。」

 歩きながら話していてマンションに着いていた。
 駅からほど近い高層マンション。

「ここに住んでるのね。
 今さら驚かないわよ。」

 ため息混じりの笹島先輩を連れて、自分の部屋へといざなった。





< 2 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop