こっちむいて?羽生
ただ一つ、触れ合うことはなかったけれど……


それでも私は満足だった。


あいつの側にいられれば、友達でも満足してた。


だけど……


美羽は違う。


羽生が唯一好きになって自分から告白した本気の恋。


他の女の子には感じたことのない焦りは、きっとそのせいだ。


二人から目を離せないでいると、羽生が教室を出ていった。


そのあとをちょこちょこと美羽が追いかける。


胸が、痛い。


美羽が受け入れるはずないってわかってても、羽生の気持ちがまだ美羽にあるかもしれないってことが辛かった。


昨日の夜、電話で美羽に宣言した言葉。


「最後だし、羽生に気持ち伝えようと思って」


美羽は、ビックリするくらい大きな声で、ほんと!っと叫んだ。


前々から言われてた告白しろってセリフ。


美羽からしてみたら、やっとって感じかもしれない。


卒業式ってシチュエーションなら、それができる気がした。


「頑張ってね?

絶対!大丈夫だと思うよ?」


興奮気味に後押しされて、ようやく覚悟を決めたっていうのに……


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