まほろば交差店
「ごめんね、こんな一方的な理由で、なんか親切の押し付けで、お節介みたいになっちゃったかな?」
「いえそんな、押し付けだなんて・・・」
「でもさ、こうやって出会ったのは・・・そうだな、運命だったとでも思って、諦めて俺のお節介を受け取ってもらえないかな?」
「運命、・・・ですか?」
「あ、いや、運命なんて言ったらクサイか。また引かせちゃうよね。なんて言えばいいのかな、そんな大それたものじゃないかもしれないけど・・・」
尋ね返したわたしに、神楽さんは少々照れたように口元を手のひらで覆い、けれどすぐに離すと、きっぱりと、言い切った。
「芦原さんと俺は、出会うべくして出会った。そう思うんだ」
出会うべくして出会った――――――――――
神楽さんがそう言った、その瞬間、
なにかが、わたしの中で変わった。
感情のどこかの部分が音を立てて共鳴して、
心が震える、そんな現象を、一身に受けていた。
”出会うべくして出会った”
神楽さんが放った言葉が、わたしの戸惑っていた感情にも正当な居場所を与えてくれたように思えたから。
知り合って間もないとか、
会うのは二度目とか、
そんなの、どうでもいいんだと思わせてくれた。
わたしは、神楽さんを――――――――――
「芦原さん?」
神楽さんに心配げに名前を呼ばれて、ハッとする。
「あ・・・はい?」
「いや、”運命” なんて大袈裟なこと言って、また困らせたかな・・・大丈夫?」
心細そうにわたしを窺う神楽さんだったけど、わたしは、思わずフ・・・と、吐息で笑ってしまった。
だって、神楽さんの顔があまりにも心配そうだったから。
そしてその心配は、杞憂だったから。
そんなわたしを、神楽さんの不思議そうな目が追ってくる。
わたしはそれを、もう惑わずに受け止めることができた。
「全然。わたしも、そう思いますから」
「え?」
微笑んで首を振ったわたしに、神楽さんは驚いた声をあげた。
「・・・出会うべくして出会った、わたしもそんな気がしてます。わたしと神楽さんには、確かに縁があったんだと思います」
”運命” なんて言葉は恥ずかしくて、”縁” に置き換えてしまったけれど、そう思えば、わたしの気持ちも素直に受け入れられるから。
神楽さんはわたしの反応を見て、破顔した。
「だったら、二度目のデートは成功だ」
そして、
「よかったら、今度三度目のデートしてくれませんか?」
優しい強引はどこへ行ったのか、ちょっと照れ臭そうに、わたしをデートに誘ってくれたのだった。