宮花物語
「じゃあ黄杏さんは、私達にはもうお子は産めないって、思ってらっしゃる?」

「いいえ、そんな事は、思っていません!」

意地悪い質問にも、正直に答える黄杏。

分かっている。

王は、そういう可愛らしい黄杏に、心引かれたのだ。


「そう?でも黄杏さんは、そう思ってらっしゃるから、王を自分の元へ、通わせ続けているんでしょう?」

「えっ……」

湯気を境に、攻守が逆転する。

「私や青蘭さんだって、まだお子を諦めたわけじゃないのよ。奥様だって、本当はまだお子を産めるはずなのに……」

悲しげな顔をしながら、紅梅はちらっと、黄杏を見た。

作戦通り、黄杏の顔は、湯に浸かっていると言うのに、青白くなっている。

「黄杏さん。王の妃は、あなた一人ではないのよ。みんなから、お子を授かる機会を、奪ってはいけないと、私は思うの。」

「でも……王が、通って来て下さるから……」

紅梅は優しく、黄杏の腕を掴んだ。
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