宮花物語
第8話 本当の自分
腹の中の子が流れても、信志は黄杏の元へ通う事を、止めなかった。

「体調はどうだ?気分が悪くなったりは、しないか?」

黄杏の手を握り、顔を合わせて尋ねてくる。

「有り難うございます。私は、大丈夫です。」

「そうか。」

信志は躊躇いもなく、黄杏を引き寄せる。

「こうして、側にいると言うのに、黄杏を抱けないとは、残酷なことよ。」

「子が流れて、まだ1ヶ月も経たぬのです。医師に止められているのは、お分かりでしょう。」

「分かっている。分かっているつもりだが、気持ちが押さえきれない。」

信志は、黄杏に口付けをした。

いつにも増して、見つめ合う二人。

子は流れたと言っても、黄杏は信志にとって、特別な存在になった。

自分の子を孕んでくれた、唯一の存在。

それが、抱けないと分かっていても、信志を黄杏の元へ通わせる、大きな理由だった。


「黄杏。いつからそなたを抱ける?」
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