宮花物語
第12章 王宮の守人
それから将拓は、忠仁の屋敷で静養し、自由に動けるようになるまで、体は回復した。

その間、兄の将拓が、忠仁の屋敷にいる事は、黄杏に伏せられた。

知れば、左目の事も分かってしまうからだ。


忠仁の屋敷は、王宮のすぐ目の前にあったが、近ければ近い程、存在に気づかぬもの。

将拓は、黄杏にはもちろん白蓮にも、存在を気づかれず傷を癒す事ができた。


そんなある日。

「将拓殿。」

珍しく昼間に家に戻ってきた忠仁は、将拓を呼び寄せた。

「お帰りなさいませ。」

主人の帰りに、将拓は膝を着き、出迎えた。

すると忠仁は、わざと将拓の斜め向かいに、胡坐をかいて座った。


「傷の方は、如何かな。」

「はい。大分治りました。」

将拓は、左目を失ったというのに、晴れやかな顔をしていた。

「それはよかった。屋敷での暮らしは、不自由してないか?」

「はい。お陰様にて、何不自由なく暮らしております。」
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