宮花物語
忠仁は、信寧王の一番近くで、世話をしていた娘を思い出した。

「ああ、あの娘か……確か名は、美麗殿と言ったか。」

「はい。」

「ははは!村一番の美女を、妻に娶ったのか。」

「そう……なりますかね。」

将拓は、少しだけ照れ笑いを浮かべた。


「……妻子の元へ戻ったら、また商売を始めるのか?」

「はい。まずは、この目の事を話して、今までと同じようにはいかない事を納得してもらう方が、先になると思います。」

王宮に出店できる事を、楽しみに夫を送り出す妻子の姿と、戻って来た時の変わり果てた夫を見る妻子の姿。

忠仁には、その両方が見えた。


「これは……一つの提案なのだが……」

「はい。」

忠仁は一息ついてから、口を開いた。

「この私の、養子にならないか?」

「えっ!!」

将拓は目を見開く程、驚いた。

「私には、子は娘一人だ。その娘も、今は王の妃に差し出した。誰も私の仕事を継ぐ者はいない。」
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