『隔絶する密室』
A氏のバルセロナでの出来事は、いったい何が言いたいのかわかりませんでした。少なくとも、起承転結があるようには感じません。しかし、しゃべっている内容はとくに矛盾した部分はなく、意味は通じました。
「それで、フランスへは行かれたんですか」と、聞いてみた。
「はい、僕はバルセロナでの滞在を終えるとパリへ行ってみることにしました。バルセロナからパリへは飛行機で二時間弱といったところです。パリでの目的というのは特に決めていたわけではありません、ですからホテルも事前に予約してはいませんでした。空港からバスでオペラ座の近くへと降り立ちました。当時はインターネットというものがまだ発達していませんでしたから、オペラ近くの観光案内所でホテルを探しました。窓口にいた男性に日本円で一泊1万円程度で泊まれるホテルをリクエストすると、中心部からは少し離れた場所にあるが、地下鉄の駅から徒歩1分に在るというホテルを推薦されました。とても丁寧だったので、迷わずそのホテルに決めて予約手数料を支払うと早速そのホテルへ向かうために地下鉄に乗ります。オペラの駅は8番線と7番線、3番線が走っていて、とりあえず7番線に乗りパレ・ロワイヤルルーブルという駅で1番線へと乗り換えポルトド・ヴァンセンヌという駅で降りました。所要時間は10分程度でしたか、乗っている時間は実にあっという間でした。
駅の出口を出ると大きな通りを挟んだ真ん中に立ち、ホテルは徒歩1分ということでしたが、不安な気分にさせます。しかし進行方向の右側にカフェや日本料理店などの立ち並ぶお店を発見したので、どこかで聞けばおしえてくれるだろうと楽な気持ちになりました。しかし、中央の大通りからすぐに目的のホテルはありました。あっけないほど簡単に見つかってしまったことに少し落胆しました。自分はもしかしたらもっと迷うことを心のどこかで期待していたのかもしれません。もっと迷ってヨーロッパを放浪する旅人っぽい演出を期待したのです。もちろん迷ったら迷ったで心配性の私はパニックになったかもしれませんが。
ホテルはとても簡素で、豪華とはいえませんでしたが、窓を開けると異国情緒ただよう雰囲気はやはりフランスへやってきたな。と、感じます。もちろんバルセロナのホテルも同様なのですが、バルセロナのホテルは窓を開けても隣のビルの壁しか見えず、こんな気分は味わえなかったのです。

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