Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
どうしてこうなった?

「お似合いですよ」

幸せそうにドレスに身を包む新婦に、友梨佳は笑顔を向けた。
表参道に建つ近代的なビルの1階にある、ベストウェディングドレスサロン表参道。
真っ白の壁、落ち着いたインテリア。広々とした空間にたくさんのドレスが並び、いくつかの個室があり新郎新婦のフィティングを行うサロンだ。

このサロンは、近隣の敷地内にドレスサロンを持たない式場の新郎新婦を一手に引き受けていて、関東地方ではで一番大きな店舗で、もともと別の式場内にいた友梨佳はこの4月からチーフとして移動になった。

橋本友梨佳 26歳。真っすぐの黒髪、どちらかといえばきつく見られがちの、真っ黒な二重瞼。薄い唇。それを接客業という事もあり、キリッとアップスタイルにして化粧はフワリとした印象にするように心がけているが、元来の男勝りの性格で学生時代に付いたあだ名は姉御。

いつも淡々としていて、女々しい事が大嫌い。恋愛して相手の男に溺れるぐらいなら、本気になんかならない。
自分の育った環境がそうしたのか、周りの友人が結婚をして行く中、一切結婚に夢が無かった。
そんな自分が就職活動の時期に友人の誘いで、なんとなく受けたブライダル業界に内定をもらった時はでやっていけるのか不安だったが、もともとオシャレや綺麗な物が好きだった友梨佳にとって配属されたドレスサロンのスタイリストという仕事は思いのほか向いていた。

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