Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
変わっていく気持ち
それから、友梨佳は度々始に呼び出されると会う日々が続いた。
あの初めての日以来、友梨佳の中で自分自身で決めたルールがあった。

絶対に一緒に朝を迎えない。

自分の中で少しずつ大きくなる始への気持ちを持て余しながらも、始との関係を清算することもできないそんな自分が嫌で仕方がなかった。

そんな自分の中のささやかな抵抗がそのルール。

始に恋愛感情はない。ただの欲求のはけ口。
そう自分自身に言い聞かせていた。

そんなただのセフレとして扱って欲しいという友梨佳の思いとは裏腹に、まるで愛されていると勘違いしそうなほどに始は友梨佳を甘やかした。

時には休日に急に現れて、デートのように出かける日もあった。
最初は拒否の言葉を述べていた友梨佳も、いつの間にか一緒に過ごす時間が心地よく、心待ちにしている自分がいた。
水族館や、ショッピングモール。時には居酒屋そしてその後は体を重ねる。
普通のカップルがするような事を始は友梨佳と一緒にする。そして当たり前のように友梨佳に微笑み、安心を与える。そんな始が何を考えているのか全く分からなかった。

「俺のストレス発散だ。契約だろ?俺のしたいようにするって」
その言葉ですべてを片付ける始。
だから、友梨佳もそれ以上なにも言えなかった。

(始が私を好きになることなんてあるはずないのに……)

好きになって欲しくない、そう思うのに始から「契約」「都合がいいから」そんな言葉を聞くたびに傷ついている自分に友梨佳は気づきたくなかった。

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