Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
「じゃあ、帰るね」
友梨佳の声に、うとうととベッドで微睡んでいた始はゆっくりと顔を上げた。
「ふーん」
ジッと始に見つめられて、友梨佳は落ち着かず慌ててベッドの下に落ちている洋服に手を伸ばした。
「ケジメは大切でしょ?」
表情の読み取れない友梨佳の言葉の真意を探るように、気だるく髪をかき上げながら始は、「ケジメね……」そう言うと友梨佳を見た。

「ルールでしょ」
ベッドに座りストッキングを履きながら、チラリと友梨佳は振り返った。
そんな友梨佳を後ろからギュッと抱きしめると、始は友梨佳が今着たばかりのワンピースのファスナーを下ろすと舌を這わせた。

「ちょっと……?」
ストンとワンピースを下ろすと、始は友梨佳をベッドに組み敷いた。

「帰るんだけど」

「もう一回やりたくなった。付き合えよ。そういうルールだろ?お互いしたくなった時にするって」
その言葉に、友梨佳は始を睨むと、
「今、したじゃない」
「うるさい。もう黙れ」
言葉とは裏腹に、泣きたくなるぐらい優しい始の手に、友梨佳は縋りたくなる気持ちを隠すように、ジッと見つめられた始の視線から逃げるように目を閉じた。

(誰も好きにならない。どうせいなくなるし、誰も私なんて愛してくれない。始だってどうせ私の体だけ……)

そんな事を必死に言い聞かせていた友梨佳は、上から降ってきた「友梨佳」と優しく甘くささやかれた自分の名前に涙が零れた。
自分でも何の涙なのか分からず、もう何かを考えるのを放棄し、始に体を委ねた。

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