いつか羽化する、その日まで

(って、いやいや、これは遊びじゃないんだから!)


アットホームな雰囲気にうっかり甘えていたが、運良く実際の会社で勉強させてもらえることになったのだ。よこしまな感情には蓋をしておかないといけない。
そう決意を新たにしていると、斜め向かいの小林さんが声をかけてくれた。


「立川さん、村山に何かされたらすぐ言って。俺に言いづらかったら、佐藤さんでもいいから」

「はい!」


ーーとは言っても、嬉しいものは嬉しい。
私は小林さんに話しかけてもらったことが嬉しくて、力を込めて返事をした。隣からは、はああ、とわざとらしいため息が聞こえる。


「小林さん、かわいい後輩に対して朝からひどいっすね。サナギちゃんも即答すぎ」

「自業自得だろ」


かわいいって誰のことだよ、と小林さんに冷たくあしらわれているにも関わらず、村山さんは機嫌が良さそうだ。


ーー何だかつかめない人だな。


パソコンの画面を見ながら鼻歌なんて歌っている村山さんを横目で見つつ、私は大いに混乱していた。

大事なはずの第一印象がどん底からの出発になってしまったことは、完全に想定外だったからだ。

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