いつか羽化する、その日まで
・・・・・
「え? ここ?」
歩き始めて五分と少し。
私の携帯の地図が、確かにここだと告げている。しかし、この建物はどう見たって……。
「社員数七千人って、何かの間違い?」
目の前に現れた二階建てのコンパクトな建物は、十人も入ればいっぱいになってしまいそうなほど、手狭そうに見える。
(どうしよう、もしかして会社の場所、間違えた?!)
おろおろと敷地の周りを歩いてみるが、近くにそれらしき建物も見当たらない。一番大きな建物は通りがけに見かけたビジネスホテルくらいだったと思い出して、途方に暮れてしまった。
初日から遅刻だなんて、印象が悪すぎる!
「ーーどうしました?」
かけられた声に振り返ると、目の覚めるような青色のスーツを着た茶髪の派手な男の人が立っている。どう見てもこの建物と結びつかないが、ちゃんと入り口から出てきたようだ。
パニックに陥っている私は、藁をもすがる思いでこの見ず知らずの人に迫った。
「あ、あのっ! 私、マナカ商事に行きたいんですけど、間違えちゃって!」
「……マナカ商事はここですが」
柔和な笑みを浮かべ、優しく答えてくれた。しかし私は、どうにも信じられない。
「え、本当に……?」
「え? ここ?」
歩き始めて五分と少し。
私の携帯の地図が、確かにここだと告げている。しかし、この建物はどう見たって……。
「社員数七千人って、何かの間違い?」
目の前に現れた二階建てのコンパクトな建物は、十人も入ればいっぱいになってしまいそうなほど、手狭そうに見える。
(どうしよう、もしかして会社の場所、間違えた?!)
おろおろと敷地の周りを歩いてみるが、近くにそれらしき建物も見当たらない。一番大きな建物は通りがけに見かけたビジネスホテルくらいだったと思い出して、途方に暮れてしまった。
初日から遅刻だなんて、印象が悪すぎる!
「ーーどうしました?」
かけられた声に振り返ると、目の覚めるような青色のスーツを着た茶髪の派手な男の人が立っている。どう見てもこの建物と結びつかないが、ちゃんと入り口から出てきたようだ。
パニックに陥っている私は、藁をもすがる思いでこの見ず知らずの人に迫った。
「あ、あのっ! 私、マナカ商事に行きたいんですけど、間違えちゃって!」
「……マナカ商事はここですが」
柔和な笑みを浮かべ、優しく答えてくれた。しかし私は、どうにも信じられない。
「え、本当に……?」