番犬男子

□ 逃走









次の日。





昨日より数度高くなった気温。

また1日、終わりに近づく夏休み。


それでも、目覚めは最高だった。



なぜなら、お兄ちゃんと10年振りに、同じ屋根の下で迎えた初めての朝だから!





顔を洗い、栗色の髪を寝癖ひとつ見逃すことなく綺麗に整えて。


お兄ちゃんに「可愛い」って言ってもらえるような洋服を選んで。


おばあちゃんが用意してくれたあたし用の部屋に置いた、等身大の鏡で身なりをチェックする。



よし、完璧。





「朝ご飯できたよ」



扉越しにおばあちゃんの声がして、返事をしながら部屋を出た。



同時に、隣のお兄ちゃんの部屋の扉も開く。


そこから出てきたのは、もちろん、身支度を済ませたお兄ちゃん。



「あっ!」


「げ」



顔を合わせた反応は、正反対。



< 95 / 613 >

この作品をシェア

pagetop