* * *

ひかるは伊崎から渡された書類を見つめていた。

「本当に豪くんがいるんですか?」

そう聞いたひかるに、
「ええ、ちゃんと調べましたから」

伊崎は答えた。

「彼は隣の県に引っ越して、建設会社で働いているそうです」

そう言った伊崎に、ひかるは泣きそうになった。

(豪くんに会えるんだ…。

しかも、こんな近くにいたなんて…)

例え彼が遠くへ行ってしまったとしても、ひかるは迷わず会いに行くつもりだった。

(どこへ行ったって、絶対に会いに行くもん…)

「行きますか?」

そう聞いてきた伊崎に、
「行きます」

ひかるのその答えに、伊崎は満足そうに微笑んだ。

「あなたなら、きっとそう言うだろうと思いました」

そう言った伊崎に、ひかるははにかんだように笑った。
< 110 / 115 >

この作品をシェア

pagetop