涙の行方〜1番大切なもの〜
「部屋」
…ポタッ…ポタ…


部屋の中はカーテンが閉まっていて、もう夜の11時を過ぎているというのに部屋には車のライトがカーテンを通して部屋の中に青い光で入ってくる。
部屋には灯りがついていなく、そのライトで部屋の家具がうっすら見えるくらいだ。

部屋の中は女の子らしい部屋ではなかった…あらゆる物が床に散らばっている。
そんな部屋で何か滴の落ちるような音が
静かな部屋には大きく聞こえた。
車が通り掛かった時一瞬部屋の中が明るくなった。
ベットの上で剃刀を片手に疼くまる。
その肩は震えていて膝には大粒の涙がポタポタ落ちていた。

目線を上げ手首を見つめる。
「また…やっちゃった…」
隣にいても聞き取れないような小さな声で呟き机の上にあったティッシュを一気に何枚もとり血のしたたる手首にあてた。

すぐ真っ赤に染まるティッシュを何度も変えようやく血が止まると、彼女はそのまま後ろに倒れ込んだ。
ベットの上にはかわいらしい縫いぐるみが
無造作に置いてある。…だが、どの縫いぐるみも流行からははなれたキャラクターだった。

ふと彼女は自分の部屋をでた。
家は一軒家で広くもないが家族3人で暮らすには充分な広さだ。
階段を降りリビングに行くと冷蔵庫からペットボトルをとりだし飲み干した。
暗いリビングにはデジタル時計が壁を照らしている。壁には小さな女の子が女の人と男の人と手を繋いで笑っている絵が額に入って飾られていて額の右下に
(金賞 伊藤 咲)
と書かれている。その絵をぼんやり見つめ自分の左腕を押さえる。
さっきまで感じなかったのに急に腕が痛くなった。

誰もいないリビングに携帯のバイブ音が響く。だが彼女は慌てる気配すらなく部屋に戻るまで携帯を開かなかった。

携帯を開くとメールを開く。送り主は人物名ではなく(着うた案内)のサイトだった。
当たり前のように慣れた手つきでメールを削除する。
そのまま布団にはいり眠りについた…
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