永く青い季節 〜十年愛〜


「美織…ちゃん?…」

血流が頭に昇ったように言葉を続ける私を、彼は呆気に取られるように見ていたが、私は流れ出す想いを止められずに喋り続けた。

「だから…辛いこともあったけど、大切な思い出をなかった事になんてできません。
それリセットして始めから…なんて…。
そんなの、嫌です」

言い終わったら、涙が溢れていた。 



思い掛けなく彼の想いを聞けたこと…
今まで心の中にずっと抱え込んでいた自分の想いを告げられたこと…
嬉しさと安堵感がごちゃ混ぜになって、私の胸を締め付けた。


「わかった。…そうだよね?
ありがとう。そんなふうに思ってくれてたなんて知らなかった。

俺、あの頃、美織ちゃんに嫌な想いばかりさせてたんじゃないかと思ってたからさ…
でも、あの頃のことがなかったら、今はないんだもんね。

じゃ、もう一度改めて言うよ。
今度はもっと大切にしたいと思うから、俺と付き合って下さい」
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