永く青い季節 〜十年愛〜



五年前の病院での出来事は、彼の裏切りなどではなかった。
彼がそんな事のできる人ではないと信じていたし、昔の臆病だった頃とは違い、愛されている自信だってあった。


それでもあの日、病室を飛び出した私は、何度も電話をかけてくれた彼の声を聴くことができなかった。

「彼女とは、気さくに話せる友達の関係だったんだ。
美織とのことも、ちゃんと話してあったし…。
だからあの時、彼女の突然の行動に自分も驚いた。
でも、美織に嫌な想いをさせたのは事実だから…。
言い訳にしか聞こえなくても仕方ないよね…。
本当にごめん」

その後も、何度もかけてくれた電話に出ようとしない私に、彼はメールで誠心誠意謝ってくれた。
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