君が言っていることは何もあってません
『La Niña現象』がバンドの正式表記だ。
覚えやすくインパクト大の名前で、プチデモンと共に私は気に入っていた。
『エルニーニョ現象』って対抗意識満々のバンドが出てきても楽しいだろうな。と考えていた。
私は普通の県立高校で授業をうけている。黒板の文字をノートに書き付けてしまうと、ノートに『La Niña現象』と
ゴシック体のフォントで書き付けて暇潰しをしていた。
「なんかかっこいいね 」
笑いながら私の友達のゆきちゃんが言った。
「La Niña?」
「うん、その絵がね」
ゆきちゃんは私を褒めてくれたのだ。
「ありがとう。La Niñaもかっこいいから聞いてね」
私がそう言うとゆきちゃんは笑ってわかったと言った。でもゆきちゃんは3人組のポルフィーが好きだった。
本とポルフィー以外には何にも興味を示さない。
「プチデモンって映画の吹替えやってたよね?歌上手いよ、吹替えの声優で歌が上手い人いないけどプチデモンは上手いと思った」
とゆきちゃんは言った。
「そうなんだ。ありがとう」
でも私はLa Niña現象の曲を聞いて欲しかった。
学校での理解者は少ない。
ポルフィーも少ないから、ゆきちゃんとは気があった。
音楽やバンドのメンバーについて話さなくても、同じようにマイノリティであったからだ。
マイノリティであるには、時々手助けがなくて悲しみがあるのだけれど特別な人間であるのだと思えた。
選民意識だ。
過剰になるとファシズム政権が産まれるから、危険な思想かもしれない。プチデモンはファシズムを嫌っていた。
思想を押し通す事は正しい。とプチデモンは良く言っていた。
しかし、思想を押し通すくらいの権力を持つべしとも。思想はそのままに私は、ゆきちゃんとあそんでいた。

ある日夢を見た。どこまでも続く砂漠の夢。
ゆきちゃんが見せてくれたポルフィーのアルバムのコンセプトが砂漠だったから、見たのだろう。
気にせず数日間過ごした。




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