【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「南々瀬、」
思考を手放せば、あっけなかった。
というか結局着替えても着替えなくても、結末は同じだったわけで。無駄に遊ばれてしまったと、ぼんやりする頭で考える。
恥ずかしいくせにゆだねてしまえば心地良くて、目を閉じてもまだ奥底に残る余韻。
囁くように名前を呼ばれて、まどろみの中で返事の代わりに「聞いてるわよ」とアピールをするけれど。
さっきまであんなに執拗にわたしを求めてきたいつみの声に、熱っぽさはもう無い。
「色々と、考えは纏まったか?」
「……進学のこと?」
投げられた話題も、予想していたものとは違って堅い。
だけどあえて今聞いてきた理由なんて、考えてみればとても簡単なことだった。
「ひとまずは、まとまった」
「……そうか」
「……どっちにしたのかって、聞かないのね」
はじめからこれが目的だったんだろう。
頑ななわたしの考えを奥底から壊してしまうには、説得するよりも何も考えられないようにしてしまったほうが早い。
まあ意味のあることだったとしても、恥ずかしさでもだえるわたしを揶揄って遊ぶのはやめてほしいけれど。
うしろから抱きしめられて、「受けようと思って」と口にする。
それだけで何もかも理解したらしいいつみは、そっと髪を撫でてくれて。
すごく安心するそれに、去年のことを思い出した。
この人が、王宮学園の絶対王者だったから。
揺らがずにわたしに手を差し伸べてくれたから、こうやって今もそばにいられる。