【完】こちら王宮学園生徒会執行部
夕陽が作詞するのか。
彼は元々多才だから、上手くこなしそうだけど。
「ほんとはリーダーの予定だったんだけど。
……いまはリーダーよりも、俺の方が思いのこもった歌詞を書けそうだから、って」
譲られて交代になった、と。
告げる夕陽が、ふわりと綺麗に笑った。
「アイドルの仕事、楽しいよ。
……でもまあ、役者の夢も諦めてないし」
「うん、」
「……俺もちゃんと頑張るから。
かわいい後輩のこと、ちゃんと応援してよ」
……わたしのことは諦める、って。
そういう意思表示なんだろう。不器用な彼の優しさに、きっと何度もわたしは救われてきた。
「わたし。
……夕陽のこと、きっと好きだったわよ」
「、」
「だって大和と両想いだったのに付き合わなかったのは、みさとがいるからって言ってたけど。
……みさとの気持ちも知ってたから、夕陽の存在にずっと安心してたの」
「ナナ、」
「ごめんねこんなこと言って。
……ずっと、夕陽のこと応援してるわ」
わたしと夕陽が感情を持ち込むのはここでおしまい。
言わなくてもお互いに分かってる。だから夕陽は、もう傷ついた顔はしていないし、彼がこの先わたしのことでその表情を見せることもない。
その代わり。
すごくすごく綺麗な表情で、笑ってくれた。