【完】こちら王宮学園生徒会執行部



夕陽が作詞するのか。

彼は元々多才だから、上手くこなしそうだけど。



「ほんとはリーダーの予定だったんだけど。

……いまはリーダーよりも、俺の方が思いのこもった歌詞を書けそうだから、って」



譲られて交代になった、と。

告げる夕陽が、ふわりと綺麗に笑った。



「アイドルの仕事、楽しいよ。

……でもまあ、役者の夢も諦めてないし」



「うん、」



「……俺もちゃんと頑張るから。

かわいい後輩のこと、ちゃんと応援してよ」



……わたしのことは諦める、って。

そういう意思表示なんだろう。不器用な彼の優しさに、きっと何度もわたしは救われてきた。




「わたし。

……夕陽のこと、きっと好きだったわよ」



「、」



「だって大和と両想いだったのに付き合わなかったのは、みさとがいるからって言ってたけど。

……みさとの気持ちも知ってたから、夕陽の存在にずっと安心してたの」



「ナナ、」



「ごめんねこんなこと言って。

……ずっと、夕陽のこと応援してるわ」



わたしと夕陽が感情を持ち込むのはここでおしまい。

言わなくてもお互いに分かってる。だから夕陽は、もう傷ついた顔はしていないし、彼がこの先わたしのことでその表情を見せることもない。



その代わり。

すごくすごく綺麗な表情で、笑ってくれた。



< 202 / 276 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop