お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
部長とエリナ
院外でドクターの車を待ってる時だ。
救急車のサイレンが鳴り響くのが聞こえて、縁起でもないと思った。

この最近ずっとツイてないせいか、また良からぬ事が起きるんじゃないかと予感する。

サイレンが聞こえる方向を見てたらドクターの車が駐車場から出てきて、路肩に沿うように止まってウインドウが開いた。



「乗れよ」


運転席の彼は私服で、白衣も身に纏ってないから倍増し素敵に見えてキュンとした。

黒いシャツの上にアイスグレーのセーター姿。それにジーンズなんて、カッコ良過ぎもいいとこでしょう。


似合ってますよ〜、と褒めたらどんな反応が返るんだろう。


想像しながらお邪魔します…と言いつつ助手席のドアに手を掛けた。
その瞬間、車の波を縫うように救急車が傍を通り抜け、ドクターの視線が逃げてく。


後ろに過ぎ去って行くのを見続けてるから心配になった。
送ると言ってくれたけど、やっぱり止めるとか言い出しそうで。


「……どうした。早く乗れよ」


いつまでも乗ろうとしない私に気づいたみたい。
振り向いた彼にホッとして、ドアの持ち手を上げた。


< 133 / 203 >

この作品をシェア

pagetop