お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
この毒ばかり吐く人に、「悪い」とか「ゴメン」とか言わせたくない。
こっちから先に送られるのを断ろう。

そう思うのに声は直ぐに出てこなくて__


頭の中では、部長って誰ですか?と思ってた。
エリナという名前がまた出てきて、その人は何者?と窺う。



「……誠に言い難いんだが…」


唇の隙間から漏れた声にドキッとする。

最初の言葉だけで阻止しないと。
そう思うと、元気な声で「大丈夫ですよ〜!」と言い渡した。


「何かご用事が入ったんですよね?私はノンビリ歩いて行くのでご心配なく!」


今夜は言いつけ通りにビールも呷ったりしません。
ちゃんと足を労って、明日は診療時間内に治療代を支払いに行くので。


そう言うと、ドクターは少しだけ困った表情を浮かべた。
自分が啖呵を切って送ると言ったのに送れない。
それが歯痒いのかな…と思った。


「送ると言ったくせに実行出来なくて…」


申し訳ないと言い出しそうな彼の雰囲気を察し、パン!とドアを閉めた。


「平気です!足なら先生が処置してくれましたし!」


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