気付けば、君の腕の中。

+ 優しく背中に手を回した



「あ、私この番組好きなの。絢華は歌番組とかよく観る?」


桃は話題を変えるのが苦手だ。

気まずい空気を変えたいのか、必死に歌番組の良さを語っているけど、目の前で流れる曲は今から20年ほど前のものばかり。


…桃、まだ生まれてないよね?


「あっ、そ、それより絢華って好きな人いないの……えっと、ごめん! 今の無し!」

「…あはは」


あたしの好きな人が誰なのか、桃はすぐさま察したらしい。



「桃、あたし凜くんとは“友達”だから、好きの意味が違うんだ」

「…え?」

「だから、何も心配することはないよ。凜くんが彼女として選んだのは桃で、あたしはどんなに頑張っても、彼の友達以上にはなれないし、ならないよ」


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