気付けば、君の腕の中。


あの日の残像が目の前に浮かぶ。


「…いつからかなあ。
あたしとお姉ちゃんは反抗期に入った途端、誰かの言うことを聞くのが嫌だった」


何で勉強をしなくてはいけないのだろう。

運動をすれば、何か報われるのだろうか。


「“頑張らなくても”あたしはご飯が食べられる。それを当たり前だと思ったの。
お姉ちゃんもいつの間にか勉強を放棄して、男の人とばかり遊ぶようになった」


嫌なことから目を背けた。

だって、勉強や運動をしなくても、あたしは生きていけるのだから。



「…でも、お父さんがいなくなって、お母さんが仕事に疲れて…。ようやく気づいた。
“当たり前”だと思っていたそれが、全部誰かの頑張りで出来ていることに」


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