気付けば、君の腕の中。



チャイムを一度鳴らす。

しかし、家の中には誰もいないのか、幾ら待っても足音は聞こえない。


もう一度チャイムを鳴らして、出てこなかったら諦めよう―、そう決心して指に力を込めた。



数秒待ってみたけれど、人が出てくる気配は感じられなかった。


面倒だけど一度出直そうと思い、踵を返したときだ。


にゃあ、と小さな泣き声が聞こえた。



思わず足を止めて辺りを見渡すと、庭の茂みから一匹の猫が顔を見せた。


ぶち柄の可愛らしい猫にあたしの目が輝く。



腰を屈めて「にゃあ」と返事をしてみれば、猫も嬉しそうにまた鳴いてくれた。


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