気付けば、君の腕の中。



その時今朝洗い物をしたせいか、手荒れが酷いことに気付いた。

帰りにハンドクリームでも買おうかと思いながら駅を目指すと、改札口のところにあの男の子がいた。


定期券を握り締めながら、ホームに向けてゆっくりと歩き出す男の子。


話しかけようと思ったけど、何て言えばいいのか分からなかった。


あの時言われた言葉の意味も、そこに込められた彼の思いも。


あたしには何一つ理解出来なかった。



ふと、男の子の着ている制服を見て、自分と同じ双坂中学校のものだと気付く。


やっぱり彼は転校してくるようだ。


同じクラスだったら、勇気を振り絞って話しかけてみよう…かな。


あたしも改札口を通ると、男の子に見つからない場所で電車を待った。


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