雨の降る世界で私が愛したのは


 雨に混じって夜の気配が漂ってきている。

 一凛の生まれ育った町よりもいくぶん小さいこの町は暗くなってくると潮が引くように通りから人々の姿が消える。

 ほのかと別れたあと最初の一週間は白いバンの中で過ごした。

 車内が見えないスモークガラスのかかった車を選んだがそれでも移動は夜だけにした。

 借りたバンはなるべく早く返さないといけない。

 車の中で聴いたラジオのニュースではまだ自分がハルを連れ出したことは知られていないようだったが、それが分かればすぐにレンタカー屋から足がつくだろう。

 どこに身を隠すか一凛は考えた。

 常に隣人を監視しているような田舎は危険だ。

 だからといって二四時間人々が行き交う眠らない大都会も都合が悪い。

 そういった点から辿りついたのがここだった。

 町の中心から少し離れたところに部屋を借りた。

 人通りの少ない路地をまた一本入った細い道の行き止まりにそのアパートはあった。

 二階建てで四世帯入居できるところを一世帯しか入っていなかった。

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