記憶の中の記憶
結局、賢人には連絡はせず、一人タクシーで帰って来た。

賢人は、先に帰っているはず。

先にご飯を作って、食べているかな。

そんな事を思いながら、玄関を開けた。


「ただいま。賢人?いるの?」

明かりがついていないリビングに、私は不審に思った。

「賢人?」

リビングに電気をつけると、まるで人気がないようだった。

おかしい。

物は無くなっていないのに、何故か胸騒ぎがした。

「賢人、賢人!」

急いで部屋に行くと、賢人の荷物が無くなっていた。

クローゼットを開けても、賢人の服がない。

「賢人……」

私はその場に、座り込んだ。


『迎えにくるから、連絡して。』

そう言ってたのに、荷物を運んでいなくなるなんて、どういう事?

私はいつの間にか、賢人に電話をしていた。

『珠姫?』

「賢人!賢人の荷物がないの!ねえ、どうして!?」

『ごめん……もう、現実に戻らなきゃ。』

それだけを言い残して、賢人の電話は切れた。
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