記憶の中の記憶
不安が消えて、また新たな不安がやってきた。

「ごめんなさい。保険会社に連絡しないと。」

「逆にごめん。珠姫のそう言う書類、どこにあるのか分からなくて。とりあえず、僕が払っておいたから。退院したら、ちょうだい。」

「ええ、そうね。」


私は、そんな当たり前の事も気づかずに、そこまでやってくれていた賢人を、どうしてこんなに疑うのか。


「親父やお袋に、口止めしておいてよかったあ。まだ結婚もしてないのに、そんな事相手方の両親に言われたら、治る病気も治らなくなる。」

「はははっ!」


私は自分のバッグの中から、スマートフォンを取り出した。

「そんな怖い方には、見えなかったわよ。私が無事だって知って、涙ぐんでたもの。」
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