ある雪の降る日私は運命の恋をする‐after story‐
「朱鳥ちゃん、検査の結果持ってきたよ」

そう言って、カーテンから陽向先生が入ってくる。

陽向先生の手には結果が入っているであろう茶封筒と、タブレット端末。

なんか、少し緊張する。

「単刀直入に言うね。朱鳥ちゃんは、多分ストレスによる狭心症だよ。」

「……狭心症…?」

「うん。ちょっと、これを見てくれるかな」

そう言われて、ベッドの机部分にタブレット端末が置かれる。

そこには心臓のイラストが載っていて、陽向先生はそれを見ながら説明してくれる。

「狭心症って言うのはね、20代の朱鳥ちゃんくらいの場合は、大抵ストレスが原因なんだ。ストレスで、心臓の血管が一部だけ狭まっちゃうの。だから、胸が痛くなったんだろうね。」

心臓の病気……

心臓は、人間が生きるために一番重要な臓器。

それがないと人間は死んじゃう。

そんなことくらいわかっていた。

だから…………それを聞いて、私はものすごく怖く、不安になった。

「大丈夫だよ。不安がらないで。ちゃんと、処置をすれば治るからね。」

そう言って、楓摩は私の手をそっと握ってくれる。

「うん。楓摩の言う通り、狭心症はちゃんと治るから大丈夫だよ。今からその説明をするね。」

それからされた説明は、なんだか遠く聞こえたきがした。

大丈夫って言われても、やっぱり怖くて、説明が一部しか耳に入ってこなかった。

覚えているのは、手術をするかカテーテルってやつで治療をするか……と聞かれたこと。

「手術の場合は、胸に傷が残っちゃうし、体への負担も大きい。だけど、その代わり、1回で済む。逆に、カテーテルは、傷は残んないし、体への負担も小さいけど、局部麻酔でやるから少し怖いかもしれないし、あとは再発のリスクもある。……どっちがいいか選んでくれるかな…?」

傷が残るのは……嫌だ。

もう、とっくに傷なんていっぱいついてるけど、でもやっぱり手術は怖いし大きい傷が残るのは嫌だ。

でも、意識がある中で心臓をいじられるカテーテルも怖い。

困って助けを求めるように楓摩の方を向くと、楓摩は優しく、もう一度私の頭を撫でてくれた。

「どっちも怖いよね……。俺も、同じ選択迫られたら選べないよ…。でも、これは早く決めないといけない事なんだ。手術は朱鳥の"体"に負担がかかる。カテーテルは朱鳥の"心"に負担がかかる。……どっちがいい?麻酔したら、あとは眠ってるだけで一瞬で終わる手術。でも、手術のあとしばらく傷が痛むし、朱鳥は体が弱いから、俺的には少し心配。カテーテルは、意識ある中でやるから、怖いよね。でも、治療したあとの痛みはない。……どっちにする?」

「…………痛いのは…嫌だ……体が辛くなるのは嫌。……でも、カテーテルも怖いよ…。それに、知ってる先生じゃなきゃ、怖くなっちゃう……。」

「そっか……。じゃあ、カテーテルの時俺がずっと手を握っててあげるって言うのは?怖くなったらすぐに言っていいよ。ずっとそばにいて、励ましてあげる。どう?」

「………………それなら………頑張る…」

そう言い切った時、目から少し涙が零れた。

……なんで、私は病気にばっかりなるんだろう。

…嫌だよ…………怖いよ……

私はそんな言葉をグッと飲み込んで、心の奥にしまい込んだ。
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