【短】イノセント
「あ…え、と……」
初めはただの…本当に普通のクラスメイトの一人。
だけど、3連続で席が隣同士になってから、気付けば男の子の中で一番の仲良しになっていた彼。
親しくなればなるほど、外見とは違う面を沢山垣間見ることが出来て。
中でも、部活動に心底熱意を注いでるのを知っていたから。
時々データの整理とか、こうして今日のようにメンバーのドリンクを作ることも手伝ったりしてきた。
だから、今いきなり起こった出来事に、気持ちが全然ついていかなくて。
手にしたボトルを見つめたまま、彼の顔を見ることが出来なかった。
「返事は、いいよ。…とは言っても、欲しくないわけじゃなくて。…動揺してない、長野の本音が聞きたいから…オレは」
「…あ、う…ん」
ぎゅうっとボトルを握り締めた指に力が篭っているのに気付いたのか、彼が少しだけ笑ってそう言ってくれる。
でもその台詞に、余計に『何か言わなくちゃ』って気持ちの方が強くなって、口唇が震えた。