トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「それなら好きになさい。でも撮られないように注意してよね。拓真があんなことになって、あんたまで何かやらかしたらウチのダメージは計り知れないんだから。」



「心得てますとも。」



「それなら何も言うことはないわ。

そういえば、最近あんたが変わったってみんな言ってるわ、前より優しいって。」


「何も変わってないつもりだけど……ていうかそれじゃ、前は冷たいみたいじゃん。酷くない?」


「勿論そう言ってるのよ。

あんたって表面上優しくても人を寄せ付けない感じがしたし、冷たく見えても不思議じゃなかったわ。

まぁ、キャラとしては前の方がカリスマ性があって良かったのかもしれないけど。」


「誉められてるんだか、貶されてるんだかわからないよ。キャラ弱くなってるじゃん。」


「これでも誉めてるのよ。

あんたが変わったのが、そのパンダのケーキを喜ぶ女が原因だっていうなら、せいぜい頑張りなさい。」


「頑張るけどさ。

……でも、どっちかっていうと今は失恋へのカウントダウン中みたいなものなんだ。彼女の気持ちは他の男に向いてるからさ。」


「変な子ね、嬉しそうにそんなこと言うなんて。」


「だよね。失恋したら慰めてね。」


「わかった、その時は落ち込む暇がないくらい仕事をあげるわ。

失恋で傷心っていうのも陰があってキャラ的にはオイシイと思うわよ。」


「鬼がいる……ヒトの傷心を売り物にする気だ!」


そう言うと、山瀬さんは「ふふふ。」と嬉しそうに笑って去っていった。いつ見ても年齢不詳で、女帝のようなオーラを振り撒いている。まさかあの人に恋愛について励まされるとは思わなかった。



もし俺が変わったのなら、知らない間に彼女に人格を変えられたのか、それとも拓真が俺を変えたのか。


いずれにせよ、あの兄妹に関わったのがすべての始まりであることに変わりはなかった
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