トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
兄は自分のことを話すと急に影が差す。その目を見ると胸が締め付けられた。

お願いだからそんなふうに自分を虐めないで。


「お兄ちゃんがどんな人か一番わかってるのは私だよ。」


「瑞希が見てきたのは、偽っていた俺だから。

内面の汚さを隠して、優しい兄のふりをしてただけだ。」



「綺麗とか、汚ないとか関係ないもん。

私はお兄ちゃんが好き。」


兄の目が見開かれて、しばらくじっと見つめると観念したように目を剃らした。


「おれは瑞希に相応しいような男じゃないんだ。

本当は嫉妬深くて、優しくもなくて、度胸もないくせに兄の立場を利用して瑞希を束縛するような馬鹿なんだから。」


「ふふ、あははっ。」


「そんなに笑わなくても……」


「違うの。それってまるっきり私のことみたいなんだもん。」


「瑞希は全く違うだろ。」


「同じたよ。

私の内面はお兄ちゃんに負けないくらい、どろどろしてるんだよ。」
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