トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「さぁ、何でだろね。僧侶の役でもやる気なんじゃない?」


「最近お坊さんの恋愛モノ増えたもんね。確かに拓真のセクシー僧侶ってハマリ役かも!今度企画書出しちゃおうかな。」



しまった。冗談のつもりが本気にされてしまった。しかも俺は僧侶としか言ってないのに「恋愛モノ」で「セクシー」の尾ひれが付いていた。



拓真のムッツリすけべな感じ……もとい、抑圧された恋心がそういう雰囲気を醸しているんだろう。


上機嫌で去っていくスタッフを見送りながら、拓真に謝らなきゃいけないことを無駄に増やした気がしたが、


…………まぁいいや。聞かなかったことにしておこう。


もうなるようになれと投げやりな気持ちで拓真の楽屋に近づくと、山瀬さんと拓真の会話が聞こえてくる。





「見た?」


「見てませんよ。」


「えー? 何で!? 妹の初仕事は気にならないの?」


「篤がいるなら、仕事面では何の心配も無いって分かってますから。


篤は仕事に妥協しない奴ですし。その点では信頼してます。」


…………拓真はそんなことを思っていたのか。信頼と言われると、余計に罪悪感が刺激される。


「ふーん、じゃあ別の心配してるのね。」


「別のって?」


「ふふっ。妹の貞操とか。」


「なっ!! 貞操とか言わないでくださいよ。」


ほんと……山瀬さんお願いだから心臓に悪い冗談はやめてください。


「だって、大反対だったでしょ? 瑞希さんの仕事の件。」


「それはまあ……」


「でもあれは近いうちにかなりの評判になるわ。見たくなくても目にする機会が増えるかも。


シリーズ化の話も出てるから、その時はまたよろしくね。

そこにいる篤も、わかった?」
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