トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
どうしてこう真っ直ぐな答えが出せるんだろう。


「うん、俺を許せないままでいい。」



隠したつもりなのに、声がうわずって泣き笑いのような顔になってしまった。


でも拓真はそれに気がつかないふりで、


「良かった」


とだけ言った。



…………



沈黙が気まずくなって、何か話題を探した頃。


携帯を見ていた拓真が、妙に迫力のある笑顔で言う。


「それにしてもさぁ、篤の言ってた『本気でいかせてもらう』っていうのは。」


びくっ。


そのねちっこい言い方、怖いんですけど。


「仕事で公私混同的な?


何も知らない瑞希にべたべた触って?


…………お前このCMで何してくれてんの!?」


「お兄さん、目が笑ってないよ!


てかCM見ないって言ったじゃん、嘘つき!」


「嫌な予感がしたから今見たんだよ。お義兄さんって言うな。篤の兄になるつもりはない!」


「そんな意味で言ってないって……


もう、これあげるから機嫌直してよ。」


「ん?」


「CMしてるチョコレート。ストレイ・シープってブランドなんだって。美味しいよ?」


「絶対いらない。」


「迷える子羊ってネーミング、拓真にもぴったりだと思うんだけどなぁ。


……あ、俺で良ければ食べさせてあげるけど。」


「いらん!」


ぱしっ


手近にあった飲みかけのペットボトルを投げつけられた。「さんぴん茶」と書いてある。いつもながら爺くさい趣味だ。


さすかに悪ノリが過ぎたかと少し反省する。



今度また、飲みに行こう。


拓真とくだらない話をして、旨い酒が飲みたい。



今日の予定が終わったら拓真を誘うつもりだった。


でも、夕方に見かけた拓真は血相を変えて張りつめた様子で、つい声をかけそびれてしまった。
< 70 / 235 >

この作品をシェア

pagetop