トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「なーんか、あやしい」


瑞希が鞄を凝視している。妙なところで勘がいいから困る。


「何が」


「お兄ちゃん、エッチな本とか隠してるんでしょ。」



そうきたか。笑いを堪えつつも、ひと安心して瑞希に向き直った。



「違う違う。隠してません。


そんなんだったら、わざと少し見えるように置いて瑞希の反応を見て遊ぶね。」


「もう何その発想! お兄ちゃんの変態!!」


瑞希が顔を赤くして怒る。そのまま風呂かどこかへ行ってしまった。


さて。


この場を取り繕った代償として、瑞希に変態の烙印を押されてしまったわけだが、それはひとまず置いておく。



一人きりの空間になると、頭のスイッチが切り替わった。自室に入り鍵をかけ、鞄からここ数日で集めた紙片を取り出した。



『黒須瑞希 お前を許さない


今すぐ表舞台から去れ』


見ているだけで、内臓が掴まれたような恐怖と底無しの不快感が溢れてくる。


誰が、一体何のためにこんなことを。
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