トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
私のぐちゃぐちゃな感情を見せないように、普段通りに振るまうのが今日の目標だ。夜、一人になるまではもう泣かない。


* * *


「待たせたな、黒須家の兄妹」


篤さんが、いつもと変わらない涼しげな笑顔でやって来た。


この前篤さんに「好きだ」と言われて、それ以来初めての再会で。


だから私はとても緊張したのだけど、篤さんは少しも変わらなかった。


篤さんの車に3人で乗って、兄が事態の説明をしようとすると篤さんは、


「ストップ。その話は着いてからで良い?」


と兄を止めた。


「良いけど、そもそも何処に向かってるんだ?」


「俺の家だけど」


篤さんの家? そんなの、ますます緊張してしまう。


「なーんも無いけどセキュリティだけはバッチリだし。


それにせっかく午後オフにしたんだもん。話だけして帰られたらつまらないでしょ。


昼から飲もーぜ。って瑞希ちゃんはまだ酒ダメだったっけ?」
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