絶対、好きになれない。
だといいな、と
空想の中で描いてみる自分の初恋。

「いい恋愛、できるといいね。」

『先輩のお眼鏡にかかったひとがいいです。わたし見る目なさそうだし。』

「うわお、責任重大だね。」

いつも通り、そんな他愛もない話をして
外が暗くなってくるころに
バイクの後部座席に乗せてもらう。
慣れてしまったものだ、とおもう。

中学の頃の自分が、
高校入学した同時の自分が、
こんなこと、想像できただろうか。

『先輩、本当にありがとうございます。わたし、東雲先輩が魔法使いなんじゃないかって思ってます。』

「ぷはっ、なにそれ!」

ではと声をかけると
いつも通り、玄関のカチャンという音がするまで
先輩はバイクにまたがって
わたしの後ろ姿を見つめてくれている。

本当に、先輩はわたしに
魔法をかけてくれたひとなんだ。
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