絶対、好きになれない。
# 叶聖side

今まで女に対して
「好き」を抱いたことはない。

いつも愛想よく振舞って来る
煩わしいものだとおもってた。

小さい頃から周りの異性のせいで
いい思い出なんてなかった。

イケメンとか男前とか
そんなレッテル勝手に貼られて
商品扱い。
鬱陶しくて敵わなかった。

ある日電車で見つけた女の子は
とても心が綺麗だった。
優しく穏やかに人に話しかけて
微笑むと礼儀正しく去っていく。

他校の女の子かーーー

思わず見惚れてしまった。
はじめての出来事だった。

「心が綺麗な人は、外見も綺麗なんだな。」

そう思いながら
なんとなくいつもの電車で
彼女を見つめていた。

これが初恋なんだろう、と自覚はなかった。

高校にはいって、
また鬱陶しい日々が始まった。
そんななか、
隣の席になった女の子にどこか見覚えがあった。
雰囲気とか、オーラとか、
なんとなく直感的にあの子だとおもった。

高峰、百合。

やはり、そうだ。

電車の彼女のなまえは
俺の友達ならみんなが知ってた。
それくらい有名な美人だったらしい。

ーーーそして告白した。

海辺で2度目の告白。

「百合ちゃーん!」

と、聞きたくない声が聞こえる。
彼の声を聞くと
小動物のように高峰が反応して振り向く。
まるで待っていたかのように。

立ち去ったあと、
次に彼女に目をやったときは
意地悪に笑う彼が
彼女のほおにキスをしているところだった。

ばっちりと目が合う。
なるほどな。

けど、俺は高峰を俺なりに守ってやりたい。
ずっと「好き」だけで終わらせたくない。
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