極上社長と結婚恋愛
 

「これ、もらっていいの?」

口元に手をやり赤くなった頬を誤魔化すように聞くと、「もちろん」とうなずかれた。

「ありがとう。部屋に飾るね」

どこに飾るか、直哉さんに相談して決めよう。
そう思いながら、写真立てを丁寧に箱に戻す。

「今日は、お義父さんはお仕事?」
「そう。出張で帰りは明日になるって。会長になったとはいっても、やっぱりいろいろ忙しいみたい」
「家にひとりでいるのはさみしい?」

結婚を機に長年勤めていた百貨店を辞めた母にそう問うと、「とんでもない」と首を横に振った。

「今までずーっと働きづめだったから、これからやりたいことがいっぱいで、さみしく思う暇なんてないわ。読みたい本も見たい映画も数えきれないほどあるし、日中のんびり散歩したり、日向ぼっこしながらソファでうたた寝したり、煮込み料理をことこと作ったり。手芸も絵画もヨガにも興味があるし、着付けは昔習ったけどもういちどきちんと勉強したいし……」

いきいきした表情で指を折る母に、思わず吹き出す。

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