ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
「まけぃたマックは?待ちぼうけ!」

「……また発声練習かよ」

「満月まさかのまた来年!!」

「だから発声練習みたいに文句言うなよ」

二週間目に入ってからも、わたしたちは安定した良好な関係を築けていた。

わたしは彼の気持ちを知った上で。

彼はわたしの全てを見越した上で。

お互いそのことには触れることなく、暗黙の合意というような距離感。


「あー誰かさんのせいでやる気でなーい」

「別のキャンバスで描いてたんだろ?」

「! まけぃたのクセに生意気ー」

「お前には負けるから」

軽口を言い合ったり、時に鋭く見抜いてきたりするのも。

それもこれも、彼の配慮と賢さが成せる技だと思う。

と、流れるようにさっき描き上げた方とは違う、昨日仕上げて乾かしていた、わたし達に背を向けた、遠い方のイーゼルに足を運んだ彗大。

あ。そっちのキャンバスは……


「これ、クリスマスイベ用とは違う作品か?」

あーやばい。真実を知る時がきた。
流石に彗大、怒っちゃうかも。
< 61 / 144 >

この作品をシェア

pagetop