鬼部長に溺愛されてます

疑りの目で麻耶を尾行した挙句、その姿を目撃されるという失態まで演じるとは情けない。


「桐島さん!」


麻耶の声に振り返る。


「どうしたんだ。アイツにたっぷりたかってやれと言っただろう?」

「だって、桐島さんが可哀想だから。私のことが心配で、ずっとつけてたんでしょ? 誠吾に妬いてくれたんでしょ?」

「ま、まさか。だからさっき言っただろう? 仕事だ、仕事」


慌てて誤魔化してみても、事実が伴わない。
全身から飛びだした綻びを見つけて、麻耶がクスッと笑みを漏らした。


「それに誠吾じゃなくて、私は桐島さんと一緒にいたいから」


俺に腕を絡ませた。


「……麻耶がそこまで言うのなら、俺も無理強いはしないが」


本音を言えば、麻耶が追いかけて来てくれたことにこの上ない喜びを感じたというのに、あくまでもシラを切りとおした。


「そのかわり、とびきり美味しいものを御馳走してくださいね?」


麻耶の甘い唇が、頬に軽く触れて離れた。


―番外編②END―

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