鬼部長に溺愛されてます

その言葉が胸にチクッと突き刺さる。
そうだというのに、私ときたら全然気づきもしないでひとりで浮かれたり落ち込んだりして、そんな姿を部長の前に曝したことが恥ずかしい。
頬がカーッと熱くなる。


「……お相手は誰なんですか?」


本当は聞くのが怖い。誰か別の人の名前が部長の口から出てくるのが怖いくせに、聞かずにはいられない。
恐る恐る桐島部長を見上げると、そこには優しく笑う目元があった。

どうしてそんな目で見つめるの?

私のことを憐れんでいるのだとしたら、ものすごくつらい。


「驚くほど鈍感なヤツだな、水原は」


気づいたときには、部長の胸に抱きしめられていた。瞬きの間を縫った離れ業だった。


「こうされてもわからないのか?」


回された腕が、さらに私をきつく引き寄せる。

……嘘でしょう?
まさか、そんなことがあるはずない。

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