【完】姐さん!!
「だって俺の手払ったじゃん。
……ごめんって言ってたし、告白されてあいつに揺らいでんのかと思って」
「……? ああ、違うわよ。
ごめんって言ったけど、そうじゃなくて」
なるみが俺の髪から手を離して、顔をのぞきこんでくる。
まっすぐ見つめられたら、触れたくなる。
「さおと、先に約束してたのよ」
「……は?」
「ほら、衣沙がその日空けて欲しいって言ったから、わたしさおに予定ずらしてもらったでしょ?
だから、そのお詫び。さおが一緒にご飯食べたいって言うから、じゃあ一緒に食べようって」
「………」
……は? ってことは、なに?
最初っからあいつと飯食う約束してたってこと?
「でも衣沙に言ってなかったこと思い出して、
あの場でごめんって謝ったんだけど」
なら、愛想つかされた云々は、まわりと俺の勝手な想像で。
なるみはただ、あいつとの約束を守っただけ?
「なんだよそれ……」
心配して損した。
ってことはあいつのことを好きになったんじゃ、とかいうのも、俺の勝手な被害妄想?
「それより、また女の子と遊んでたの?」
そんな身勝手な被害妄想でやるせない気分になって遊んでた、とは、なるみに言えるわけもなくて。
純粋な瞳を向けてくる彼女に、「誰かから聞いた?」と尋ねれば、ふるふると首を横に振る。