切ない春も、君となら。

「え?」

「へ?」

彼に続いて、私まで疑問形の言葉を発してしまった。


私……今、告白しちゃった⁉︎


ど、どうしよう! 気持ちが抑えきれなくて、自然に言葉が出てきてしまって……でも、動揺はしているけど……後悔はしてない。


だって、彼のことが好きなのは本当だから。



それでも、告白の返事を聞くのは怖くて、花火も、彼の顔も見れずに、俯いてしまう。


しばらくして、頭上から降ってきた彼の言葉は、


「うん」



……うん?




「……うんって何?」

思わず彼に視線を向けて質問を投げかけてしまうけど、彼はやっぱり「うん」としか言わない。

しかもこっちを見ずに、視線は真っ直ぐ前を向いている。


返事を急かしたい訳じゃないけれど、曖昧なことを言われるとモヤモヤしてしまう。

近田君の考えてることが知りたいよ……。


すると、一際大きな花火が、一際大きな音と共に暗闇の中で満開に花開く。


それと同時に、さっきまでより一層強い光が私達を照らす。


その時に、一瞬だけど見えてしまった。


普段以上に真っ赤な顔して、照れている彼の顔が。


「近田君……?」

「み、見るなって」

「わっ」

彼の大きな右手で視界を覆われる。目の前が真っ暗だ。


「……見せてよ」

両手で彼の右手に触れて、ぐっと力を込めて私の顔から外す。


「近田君のもっと色んな表情が見たい。
それにーー何でそんな顔してるのか、教えて」


さっきまでは彼の顔がちゃんと見れなかったくせに、今はこれでもかってくらいに真っ直ぐに見つめてしまった。きっと、彼の全てをこの目で見て、感じたいから。


「……敵わないな、お前には」

私が触れている右手からそっと力を抜いた彼は、ちょっとだけ困った様な、だけど優しい顔でふっと笑いながらそう言った。

私も彼の右手から自分の両手を離しながらーー彼の言葉の続きを待つ。


「入学式で初めて会った時は〝何だこいつ〟って思ったのにな。いつの間にか……俺が守ってあげたいって思った」
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